こんにちは、風山美久里です。
ヴァイオリンを初めとする弦楽器と聞いて敷居が高いと感じるのは、誰から聞いたでもなく “音を出すのが難しい” とか “ギギーッとしか音が出ない” という先入観みたいなものがあるのもひとつの要因ではないでしょうか。
でも、そんなことは全然ありません。弓毛(馬のしっぽの毛)に松ヤニを均等に塗り、弓の根元を本体の弦に垂直において、弓の重さだけで引き下ろしてみてください。弓は常に弦に対して垂直ですよ。そうすると普通に音が出ますよね。
音を出すのがむずかしい楽器はむしろ金管楽器や木管楽器の方ではないでしょうか。金管楽器のマウスピースは、上下唇を振動させて音を出さなくてはなりませんし、木管のリードは、息の入れ方がむずかしい。フルートの歌口は口唇の形と息の入れ方がともにむずかしいと思います。
僕自身は、木管・金管ともにいろいろ試した中で一番音出しのむずかしかったのは、オーボエでした。余談ですが、このオーボエという楽器は木管・金管楽器の中で、唯一、音程を上下に変化させてのビブラートができる楽器と僕は思っています。僕のオーボエの先生は、”オーボエのビブラートは音の強弱でつける” と言っていましたが、ヴァイオリンをやっている僕から言わせれば、オーボエは弦楽器と同じ種類のビブラートをかけることの出来る唯一の吹奏楽器であると僕は考えています。フルートもビブラートをかけられるけど、それは音の強弱によるビブラートであって音程の変化によるビブラートはできません。宮本文昭さんのオーボエを聞いていると、深くあじわいのあるビブラートを操り、魂に染みいるような旋律を歌い上げていますよね。
さて、中学一年で吹奏楽部に入ってコンクールの予選や本選に出れるのも、音出しは比較的難しいけれど、いざ音が出だすとそこからの上達は比較的早いという吹奏楽器群だからこそだと思います。もちろん、それぞれの楽器もそれ相応に奥が深いのですが。
ところで、弦楽器やピアノは2年や3年でコンクールというわけにはいきませんよね。音を出すのは簡単だけれど人様に聞いてもらう音となると2年や3年では難しいでしょう。人は感情を主に口から発しますよね。喜怒哀楽を発する手段が口から発する言霊であると言うことです。ですので、吹奏楽器はある意味、演奏しやすい。
ヴァイオリンやビオラ、そしてチェロなどの弦楽器は、手という道具を使って音を出し、耳と体に伝えてその感動を瞬時に手にフィードバックさせる、そのような楽器だからこそ、毎日の体全体の繊細なトレーニングが必要なのではないでしょうか。
でも奥が深いからこそ、いくつからでも始められ、楽しく続けていればいくつになっても新しい発見に出会い、そして上達・成長していくことのできる、そんな自分の分身であると思うのです。
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